オーガニックのおやつと聞くと「無添加」をイメージされる方が多いですよね。
実際に、当店で扱っているおやつの大多数は無添加のものです。素材そのままのおいしさを楽しめることこそ、オーガニックの大きな魅力だと思っています。
でもじつは、ヨーロッパ(EU)の法律で、乳幼児用の穀物加工品にはビタミンB1を加えることが定められているほか、クッキーや焼き菓子をおいしく仕上げるためにほんの少しだけ使われる成分もあります。もちろん、家庭で普通に使うベーキングパウダーと同じレベルの、安全とされているものだけです。
今日は、その背景と理由についてお話ししたいと思います。
法律で決まっている“やむを得ない添加物” ビタミンB1
まずご紹介したいのは「ビタミンB1(チアミン)」です。
当店のラインナップでは、穀物製のスナック菓子やクッキー、幼児用乾燥パスタに添加されています。
これはEUの法律によって、乳幼児用の穀物製品には必ず加えることが定められている成分なんです。
具体的には、Commission Directive 2006/125/EC に基づき、乳幼児用穀物加工食品にはビタミンB1の最低含有量が義務付けられているのです。
なぜそんな決まりがあるのでしょうか?
それは栄養不足を防ぐためです。穀物ベースの製品はビタミンB1をほとんど含まないため、そればかりを与えると不足するおそれがあり、成長や神経の発達に影響してしまう可能性があります。そこでEUでは、赤ちゃんの健康を守るために法律での添加を義務化しています。
ここで少し文化の違いもお話ししますね。
ドイツでは「Abendbrei(アーベンドブライ)」と呼ばれる夜の離乳食がいまでも一般的です。これはビスケット粉や穀物フレークを牛乳やお湯で溶いて作るお粥のようなもので、お腹にしっかりたまるため、赤ちゃんが夜ぐっすり眠るといわれています。多くの親が取り入れていて、ドラッグストアにもたくさん並んでいます。
一方、日本では、1日3食の離乳食に、おかゆだけでなく、いろいろな野菜をすりつぶしたものを組み合わせてあげるのが一般的です。市販のベビーフードももちろん取り入れますが、ヨーロッパのように穀物が多めではなく、どちらかといえば野菜を中心にしたメニューですよね。
だからこそ、特別にビタミンB1を強化しなくても、自然に必要な量を摂れることが多く、法律での添加義務も設けられていないのかなと思います。
大切なのは、このEUでの添加義務は「乳幼児用の穀物製品」に限られるという点です。大人も食べる一般用の食品には適用されません。あくまで、赤ちゃんの健やかな成長を守るためにだけ、特別に加えられているのです。
おやつの楽しみを守るために“最小限許容している添加物”
次にご紹介するのは、本当は無添加がいいけど、当店のポリシーとして「おやつの楽しみを損なわないために最小限だけ使ってよい」と考えている添加物です。もちろん、通常の使用では体に害はありません。ご家庭で使う調味料や製菓材料と同じように、安心できるものだけです。
炭酸ナトリウムと重曹(クッキーなどの焼き菓子)
これらは“膨張剤”として使われています。クッキーやケーキをふんわり、さっくり仕上げてくれる、大切な役割を持っています。私たちが家でお菓子を焼くときにベーキングパウダーを使うのと同じイメージです。
水酸化ナトリウム(プレッツェル)
ドイツの伝統的なおやつ「プレッツェル」の、独特の焼き色と香ばしい風味に焼き上げるために使われるアルカリ液です。
オーブンで焼くときに空気中の二酸化炭素や熱と反応し、食品でも使われる炭酸塩(炭酸ナトリウムなど)に変わります。焼き上がったあとに危険な強いアルカリが残っているわけではありませんのでご安心を。伝統的な製法の一部なのです。
マルトデキストリン(天然食用色素の粉末化に使用)
天然由来の色素を粉末の形にするために補助的に使われる成分です。もともとはトウモロコシなどのでんぷんから作られていて、食品扱いとされています。ただ、自然界にそのまま存在するものではないので「添加物」と感じられる方もいます。
ひまわりレシチン(焼き菓子)
こちらは“乳化剤”として使われます。油と水のように本来は混ざらないものを、なめらかにまとめてくれる役割があります。チョコレートやクッキーをきれいに焼き上げるために欠かせない存在です。ひまわりの種から作られる、植物由来の成分です。
ご家庭ごとの基準を大切に
もちろん、添加物についての基準は保護者の皆さまそれぞれ異なるものだと思います。
「本当に無添加がいい」という方は、商品ページの原材料欄をご確認いただき、ご自身の方針に合った商品をお選びいただければと思います。
安心して食べられる添加物と、避けたい添加物
ここで少し対比の話も。
当店が扱うのは上で紹介したような「安全とされる添加物」だけですが、世の中には気をつけたい添加物もあります。
たとえば、非オーガニックのドライフルーツに使われることがある 二酸化硫黄 や、見た目を鮮やかにするだけの 合成着色料。これらは素材の栄養や味に関係なく、過剰に摂ると体に負担になることがあります。
当店では、こうした不要でリスクのある添加物を使用したものは扱っていません。あくまで、法律で必要とされるものや、おいしさを守るために安全とされる最小限のものだけを扱っています。
おわりに
「オーガニック=完全無添加」と思われがちですが、実際には赤ちゃんの健康を守るため、あるいはおやつをおいしくするために、やむを得ず、または最小限だけ添加されるものがあります。その背景を知ることで、きっとおやつ選びがもっと安心で、納得できるものになると思います。
ただし、当店の基本は 「大多数は無添加」 であること。そして、体に不要でリスクのある添加物は一切扱わないことです。
「安全であること」と「おやつの楽しさ」。その両方を大切にしているのが、私たちのポリシーです。どうぞ安心して、お子さんと一緒にオーガニックのおやつ時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。


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